2000/07/06

サライ 2000年 13号

サライ 2000年 13号

特集 麻で快眠、日本の夏
    枕・敷布・夏掛けで夜を涼しく

 麻で快眠 日本の夏
 枕、敷布、夏掛けで夜を涼しく


 蒸し暑さが増し、だんだん寝苦しくなる夏の夜に閉口している方も多いだろう。
 そんなときに、さらりとした肌触りと冷ややかな感触から長く織物として愛用されてきた麻を寝具として利用すれば、心地よく眠れる。
 日本の織物の元祖である、麻の美点を見直してみたい。

麻布の誂え快眠具
石田屋・石川県能美郡
数多くの麻の生地から選べる、誂え寝装品。


 昭和の中頃までわた屋と呼ばれる製綿所が、必ず近所にあった。
 布団は、わた屋から好みの分量だけ中わたを買い、思い思いの着古した着物や布で仕立てて使っていた。
 大正12年に創業した「石田屋」は、当時の優れた利点を残し、新しいわた屋を目指す一風変わった布団店である。
 ひと口に布団店とは言えない理由は、あらゆる注文に応える熱心な物作りにある。
 布団カバーやシーツ、枕カバーから布団皮に至るまで、一点一点企画した生地サンプルは1000点を超える豊富さだ。
 むろん麻の生地も多く揃っている。
小千谷縮や能登上布などの麻の伝統素材は、布団用の入手が難しいが、ここなら布団やカバーを誂えてくれる。
満足がいく麻の寝装品が手に入らないなら、是非訪ねてみて欲しい。



(「サライ」2000年13号記事本文中より抜粋)


麻は、遡ること1万年前、新石器時代からの織物素材
歴史が培った、優れた機能性

 麻の歴史は、古代人が樹皮や草から繊維を採った新石器時代にまで遡る。
かつて日本の随所に自生した芋麻や大麻は、夏だけでなく、冬には、幾重にも重ねて刺し子を施して用いた。
麻が唯一の織物であった当事、季節を問わない万能な布であった。
 一方、麻の寝具というと、平安期から麻の筵が寝床に用いられていた記録があり、麻や藁、葛などの筵のような簡素な夜具を長く使っていた。
 宮中から庶民に至るまで、季節を問わずに衣服から道具まで幅広く用いられていた麻だが、高級輸入品だった木綿の本格的な国産が
江戸期中頃から始まり、様相は一変する。
木綿が大衆化する中で、麻は武士の裃や袴といった、通気性が必要な礼服に多く使われるようになった。
このように、大衆の衣生活が充実するにつれ、麻は特性を生かした季節や用途に用いられるようになる。
 現在は、原料の高価さや手間がかかるために縁遠くなりつつあるが、高温多湿の気候でこれほど過ごしやすい織物はない。
麻は、素朴な表情と優れた機能から蒸し暑さを防ぎ、涼感を醸してくれる。


(「サライ」2000年13号記事本文中より抜粋)