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▼『石田屋』との出会いは?

 『石田屋』という店があることは、かなり以前から知っていました。ある意味、日本の寝具業界では名前が響き始めていましたからね。認識は持ってましたよ。

▼でも、宮崎さんは出会いを待ってたんですね。

 そう言えますね。僕自身がもの作りの人間で、営業ということを殆どしないということもあって、『石田屋』の事を知った時でも、さっと連絡を取るというようなことはしませんでしたから、待っていたという言い方が適切かも知れませんね。でもね、いつか必ず『石田屋』とは出会うだろうな、と強く感じたんです。だから、余計に待ってたんでしょうね。

▼まるで、恋人たちのようなストーリーですね。宮崎さんは専らオリジナルのこたつ布団を作って、全国の布団屋さんに卸しているわけですが、営業は殆どしないのですか。

 一年に一回だけ決まった時季に全国を周るんですわ。『石田屋』から電話があった時も、金沢におじゃましたのは半年後のことでした。それから、こたつ布団という言い方を僕はしないんですよ。

▼えっ、では、どのような言い方で?

 おこた布団って言ってます。こたつのほっこりとした暖っかい感じがよく出ていて、気に入ってしまい、それから、ずっとこの言い方で通してます。

▼失礼しました。宮崎さんがお作りになるおこた布団は、生地の選定や染めから始める、とお聞きしましたが。

 こたつは日本の文化ですし、昔ながらの染めや文様を大事にしたいという思いがあったので、自分で最初から作るんです。とはいえ、現代の生活の中で映えるおこた布団をイメージして作ってますよ。例えば、リビングや洋間でのおこたライフの提案やフローリングでのおこたスタイルの提案をしています。

 
自分自身が使っている自作の「おこた布団」。 文様は分銅つなぎという古来のものを再現しているが、仕上がった感じは新しい。

 
▼素材の選定や染めはどのように学ばれたのですか?

 僕には師匠がいません。いろんな分野の先達から盗んだんです。いわゆる独学ですね。たとえば、柿渋をする芸術家を知ると、遊びに行って、いろんな話をするんですが、その会話の断片から技法やポイントを盗むんですよ。

▼それはすごいですね。

 この商売を始めたのが四十歳すぎでしたから、人より遅れたと思っていましたし、それだけにやってやろうという気持ちが人一倍強かったんですね。やろうという気持ちがあれば、独学で何でもできますよ。

▼いま十年余たって、いかかですか?

 まだまだ。入り口の入り口に立ってると思っています。この世界は奥が深いことも分かっていますが、僕は奥の方の道へは行きたくないんです。そこから先はアートなんですよ。僕は、商品を作っているわけで、アートを作っているのではないのです。一つしかないものを作っているのではなく、複数作れるものを作っているのです。ですから、意識して、広く浅くを心がけています。

▼本来の意味でのプロデューサーですね。

 そんなかっこいいもんと違う。実家が布団屋で、僕はあとを継がなかったけれど、全国の布団屋さんを手伝いたいという思いが強くて、この仕事をして来たんですよ。

▼『石田屋』とはいい関係のようですね。

 生地や素材、作り方のことを実によく知っていて、布団屋で『石田屋』の三代目ほど布団に精通している人はいないでしょう。それに時代を読む力があるので、今まで勉強してきたことがぱっと花咲いたと思ってますよ。十年前にア・ウン店を出してたら、失敗したでしょうね(笑)。彼とはいい関係だけど、いい意味の緊張関係を保っていきたいですね。

 [2002年8月20日発行・季刊誌金澤No.24号]