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▼小阪さんのお名前は『日経流通』や『商業界』などで拝見したことがあり。著作も何度か読んだことがあります。主として小売業のための有益な示唆やコメントを発せられてますね。
 石田屋とはどのような出会いがあったのですか?

 ありがとうございます。私がこの研究所を作って最初に関わった仕事がたまたま寝具店の活性化プロジェクトでして、名古屋で開かれた会合の二次会でお会いしたと思います。

▼二次会?

 石田屋さんはプロジェクトのメンバーではなくて、メンバーのお知り合いという立場だったからでしょう。すでにその時からユニークな存在の方であり、お店でしたからね。私の軸で見れば、私が提唱していたことを、すでに実践されていた布団屋さんでした。

▼提唱されていたというのは、小阪さんの「わくわく系ビジネス」あるいは「わくわく系マーケティング」のことですね。

 はい。私は、小売業は本来、客をわくわくさせ、喜ばせる仕事だと考えています。客に新しい世界を見せて、おひねりをいただく仕事というような表現もしたりしますが。

▼なるほど。そのような提唱活動などで「エバンジェリスト」という肩書きを持ていらっしゃいますが、これは?

 もともとは伝道師という意味です。研究所の名前の一部にオラクルという言葉を使っていますが、これは啓示という意味ですから、啓示を世に伝えていく人、というような意味合いで、名詞の肩書きに用いています。もちろん宗教ではないんですよ。

▼そういう説明を聞くと、どのような経緯で現在のお仕事に至ったのか、ぜひうかがってみたいですね。

 もともと私は美学生で、経済や経営とはほど遠いところにいたんです。大学を卒業してある広告店に入ったら、その会社の系列で、別会社である小売会社に配属されて、そこから社会人のスタートを切ったんです。その時は落ち込みましたね。ところが、紆余曲折はあったのですが、その小売り会社で自分の店の売り上げをどんどん伸ばし、結果として楽しくなってきたんですね。今からふりかえると、小売業ビジネスという商売の根っこに自分がやりたいなあと思っていたことが発見できたんですね。

▼つまり、人をわくわくさせるような新しい世界を見せていく、というようなことですね。

 そうですね。その後、広告代理店部門に引っ張られまして、そこではイベントばかり手がけてました。有料の集客イベントですが何年かやっていくうちに、自分には見えるのに多くの人には見えないものやことがあることに気づき、それを人々に伝えたいと願うようになりました。その世界と商売を融合できたらいっそういいだろうなと考えたわけです。

▼それが独立ということになったんですね。

 はい。私は経営コンサルタントという意識はまったく持っていません。オラクルは啓示というよりひらめきです。その根っこにある考え方とそれを実現していくやり方を伝道したいと思っているのです。商売の根本にある哲学あるいはコンセプトですね、そこから具体的な実践法に至るまで明らかにして誰にでも理解できるように言葉にして伝えていくわけです。だから、エバンジェリストが一番適切な肩書きなんですよ。

今夏に、今までの思考をまとめた本をPHP研究所から発刊の予定。

 
 
▼コンセプトから具体的な実践方法に至るまで言葉にして伝えていくって、凄い幅広く、奥の深いことですよね。そのことについてもう少しお話ししてください。

 お客を喜ばせて、おひねりをもらうのが商売とするなら、喜ばせるためには新しい世界をお客に見せて差し上げないといけないわけです。ということは、商売をする人はマスターであり、お客様は神様ではなく、弟子ということになります。売るためにはどうしたらよいのかなんて考えるから答えが出ないんで、お客がここに来て欲しがるためには何をすればよいのかと考えるべきです。新しいお客をどのようにして獲得すべきかということにも通じます。

▼それを個々の小売業の方々に即して具体的に語られるわけですか?

 そうです。例をあげれば、きりがありません。しかし、思考のプロセスと表現方法がしっかりしていれば、できます。

▼どうも根底のところで、人間そのものに深い関心を抱かれているようですね。

 そうです。モノやサービスではなく、人にフォーカスしています。人の思考やエモーション、あるいは心理にフォーカスして学んでいるのです。要するに、人間って、なぁに?ということですよ。

▼それは大事なことです。

 自分の体験を体系化したり、手法を考えたりするのにいくつかの学問や何人かの研究所のアドバイスが役に立っています。ご商売をされているたくさんの人たちを相手にすということは、哲学から実践手段まで自分の中で十分に消化し、保持していかなければなりません。6月にPHP研究所からこれまでの集大成のような新刊を出しますので、それをお読みください。

▼石田屋に期待することは?

 いま石田屋さんで起きていることは全国の同業者からは信じられないことばかりでしょう。石田屋さんから見えているものが他の方には見えないんですよ。ご商売の哲学、知識、体験、マーケティング、商品作り、すべてが他と違ってきます。そういう具体的なところを身を持って示していらっしゃる。そういう意味でフロントランナーであり続けてほしいと願っています。

 

 [2003年4月20日発行・季刊誌金澤No.28号]